コレクション:永井家不二道資料
歴史小説家永井路子氏(1925-2023)の本家(茨城県古河市)初代八郎治が収集した、江戸時代後期に広がった山岳信仰である不二講の関係資料。目録の表題件数では、正徳2年(1712)から昭和17年(1942)まで133件が現存している。平成21年(2009)永井路子氏より茨城大学図書館に寄贈された。
不二講(富士講)は、富士山を信仰する人々が結成した組織で、近世、江戸の町人や農民の間に広まり、俗に江戸八百八講と呼ばれるほど爆発的に栄えた。講の人々は、夏に白衣を着て鈴を振り、六根清浄を唱えながら集団で富士山に登り祈願する。いくつかの教派があり、特に身禄派が幅広く信者を集めた。
本資料は、軸装された文書や図書などによって構成される。全体の半分近くを占める書簡は、そのほとんどが三志から永井家・古河同行中宛のものである。三志は、小谷三志(1765-1841)のことと思われ、身禄派の教えを引き継ぎ新たに不二道を開いた人物である。その教えは、日常の道徳実践を重視するもので、布教のため各地を巡回し多くの信者を得た。書簡では、伊勢や日光など道中での講話や参拝について述べている。