茨城大学デジタルコレクション

コレクション:藤田東湖の書

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 幕末の水戸藩士で学者の藤田東湖(1806-1855)直筆の書である。書の内容は、中国の南宋末期に文天祥が獄中で作った漢詩「正気歌」を揮毫したものである。東湖が、福島県いわき市の湯本温泉にある旅館「大滝館」に滞在した折に御礼として贈られたと伝えられている。平成20年(2008)、同館から茨城大学人文学部長佐々木寛司教授を通じて茨城大学図書館に寄贈された。
 藤田東湖は、9代水戸藩主徳川斉昭の腹心として藩政改革を推進するとともに、学者としても活躍し、多くの書物を著している。なかでも、この文天祥の「正気歌」にならって作られた五言古詩「和文天祥正気歌」は、斉昭の江戸召還を機に幽閉された際に書かれたとされ、幕末の対外的危機の中で忠君愛国の精神を謳い、尊王攘夷派の志士たちに愛唱されその士気を高めた。文天祥(1236-1282)は、南宋末期の政治家・軍人で、「正気歌」は元(モンゴル)の捕虜となった獄中で滅亡した南宋への忠節を込めて作ったものである。東湖だけでなく、長州藩の吉田松陰など、幕末の志士や学者たちに大きな影響を与えた。

藤田東湖の書
藤田東湖の書